NFTはブロックチェーン上に構築されるトークン技術の1つであり、希少価値を高める識別情報の付与機能と改ざん等の不正に対するセキュリティ、そしてグローバルベースの拡散性を誇っています。
一方、NFTを有効な資産形成手段に昇華させるには、マーケットにおける影響力を考察し、把握することが必要不可欠でしょう。
そこで本記事では、日本国内でのこれまでの動向と今後の展望を解説していきます。
日本のマーケットにおけるNFT
ここではまず、日本のマーケットにおけるNFTの動向や運用に関わる団体等を解説していきますので、是非参考にして下さい。
NFTが普及したきっかけ
日本にNFTが普及したきっかけとして挙げられるのが、2017年にカナダのAxiom Zen社によって開発されたブロックチェーンゲームである「CryptoKitties」です。
子猫のキャラクターを模したカードをユーザー同士でやり取りするこのゲームは、それまで実現しなかった「娯楽でお金を稼ぐ」ことを可能にした革新的な存在であり、リリースからわずか半年足らずで約19億円という記録的な売上を達成したことは今でも業界の話題となっています。
NFTに関連する団体
日本のマーケットでは、仮想通貨やブロックチェーンを取り扱う個人、あるいは事業者の健全な運用を推進するために、複数の団体が活動しています。
JCBA(日本仮想通貨ビジネス協会)
証券会社や金融取引に携わる業者、そして銀行が参加する業界団体であり、運用の指針やガイドラインの策定、意見交換を主としています。
BCA(ブロックチェーンコンテンツ協会)
会員向けのシンポジウムやセミナーの開催、ガイドラインを策定し、自治体や省庁、事業者と連携した促進活動を行っています。その他にもブロックチェーン協会や日本セキュリティトークン協会といった様々な団体が、技術の普及及び発展に寄与しています。
ブロックチェーンゲームの動向
次は日本のマーケットにおけるブロックチェーンゲームの動向について詳しく見ていきましょう。NFTとゲームの親和性は大変高く、今後も更なる発展が見込まれているため、是非参考にして下さい。
Crypto Spells
「Crypto Spells」は、2019年6月のリリース初日に約2,000万円という売上を記録した人気トレーディングカードであり、現在においても業界最大クラスの取引額を維持しています。
また、運営企業のCryptogames社は主要マーケットプレイスであるNFTStudioを立ち上げたことでも知られていることから、今後の動向にも注目が集まっています。
My Crypto Heroes
日本のマーケットにおいて主要の1社に数えらえるdouble jump.tokyo社が運営する「My Crypto Heroes」は、歴史上に登場する人物を模したキャラクターを強化し、チームを組んで対戦するゲームであり、2018年のリリースからほどなくして、取引高及び取引量において世界第1位を獲得した実績を誇っています。
NFTがもたらしたゲーム業界の変革
NFTの登場によるゲーム業界の発展は著しく、ゲームでお金を稼ぐというそれまでには実現しなかった仕組みや世界規模の拡散性、そして異なるブロックチェーンゲーム間でのNFTアイテムの互換機能等、その変革は多彩なものといえるでしょう。
また、両者の親和性は様々なジャンルの中でも特に高いことから、今後においても更なる発展が見込まれています。
NFTアートの動向
次はNFTアートの動向について解説していきます。ゲームと同じくNFTの有用性が発揮されやすい分野であるため、しっかり押さえておきましょう。
NFT Studio
「NFT Studio」は先ほど触れたCrypto games社が運営するNFTマーケットプレイスであり、日本初のクレジットカード決済やガス代の削減といった、利便性の高いサービスを提供しています。
また、1SEC社が開発したバーチャルスニーカーの売買プラットフォーム構築にも寄与したことも、市場の認知度を高めたトピックスとなっています。
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nanakusa
2021年にグローバル展開されたNFTマーケットプレイス「nanakusa」は、公認アーティストのみが出品できるシステムを採用しており、アート、写真、イラスト、作家など様々なジャンルに対応しています。
また、同年8月にはクレジットカード決済機能もリリースしたことから、より多くのサービス拡充に期待が持たれています。
NFTがもたらしたアート業界の変革
従来のイラストやVRアートといったデジタルコンテンツは、比較的コピーや改ざんが容易であったことから安価で取引されるのが一般的でした。
しかし、NFTの登場によって資産価値の付与が可能となり、現在の市場では数千万円で売買されることも珍しい現象ではありません。
そして知名度や資格がなくとも出品できるNFTマーケットプレイスを活用することで、それまで販路が限られていたクリエイターも多くの利益チャンスに恵まれるようになりました。
その他分野の動向
ここからは、ファッションやスポーツといったその他分野の動向について解説していきますので、全体のトレンドを掴むために是非参考にして下さい。
ファッション業界
先ほど解説した1SEC社がリリースしたNFTバーチャルスニーカーは、1つあたり約140万円という高額でありながら開始からわずか数分で完売という記録を達成しています。
そして画像の中の自分自身を着せ替えられるバーチャルドレス等も、Instagramを中心に活動するインフルエンサーから高い人気を獲得していることから、NFTはファッション業界においても有用性の高い技術といえるでしょう。
スポーツ業界
NFTの技術はスポーツ業界の発展にも貢献しており、CoincheckNFTで取り扱われている「SORARE」は実在のサッカー選手と試合に連動したブロックチェーンゲームとして話題を集めています。
また、プロバスケットボール選手のハイライト動画をカードにした「NBA Top Shot」に関しては数千万円という高値で売買されることもあるため、今後より多くのスポーツジャンルへの派生も期待されています。
出版業界
一見すると関連性の見出せない出版業界ですが、紙媒体の書籍にデジタル付録を付属する新しい取り組みが始まっています。
そして、NFT化した電子書籍が中古本として二次流通した際、出版社や著者へ利益が還元される仕組みの実証実験にも注目が集まっており、もし本格的に実装されれば、これまでにはないビジネスモデルが誕生するでしょう。
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今後の課題と展望について
ここからは、日本のマーケットにおける今後の課題と展望についてを解説していきますので、現在NFTにチャレンジを検討してる方はしっかり押さえて下さい。
税務状況が定まっていない
日本仮想通貨税務協会の見解によると、NFTの出品や転売で発生した利益は仮想通貨の売買によるもの、とされていることから、現状は雑所得として申告するのが通例となっています。
一方、固有資産であるNFTは厳密にいうと仮想通貨ではないという大前提があるため、業界内では上記のロジックに生じている矛盾を指摘する声も多く、今後特有の制度が設けられる可能性があります。
ユーザー保護の体制が整っていない
流通して間もない技術であるNFTは未だ法規制が整っていない部分も多くなっています。
したがって、たとえば端末の乗っ取り等でNFTアイテムが盗難、消去されてしまった場合のクリティカルな保護制度が確立されていないことから、実際に取引する際はある程度の危機管理は必要といえるでしょう。
著作権問題
NFTは譲渡、あるいは売買することで所有権を移動することは可能ですが、著作権までカバーする性質は現状持ち合わせていません。
したがって、インターネット上で一般公開されているデジタルコンテンツであれば、クリエイター以外の他人であってもNFTとして販売することもできるため、業界内では対策を講じるプライオリティ―の高い問題として提唱されています。
需要の拡大に伴う今後の法整備について
ここまで解説した通り、NFTの法整備は現状完成されたものではないことから、運用する上では様々なリスクを想定しなければなりません。
一方、昨今の需要拡大に伴い税区分やユーザーの保護体制、著作権問題に対するソリューション、あるいは固有制度の確立も積極的に検討されているため、今後より安全な環境が整備されていく期待は十分に持てるでしょう。
まとめ
現在はゲームやアートのみならず、出版業界やファッションにおいても新たなビジネスモデルのきっかけとして注目されているNFTですが、その有用性は知的財産や不動産といった、既に現実市場において高い価値を持っていた分野にまで波及し始めており、今後の伸びしろについては依然として計り知れないものがあります。
一方、前例のない技術であるだけに法規制が整っていない部分には注意が必要であり、一般公開していた自身の作品が知らずのうちにNFTマーケットプレイスで販売されてしまう可能性もゼロではなく、端末が乗っ取られて保有していたアイテムが盗難、あるいは削除されてしまった際の対応についてもある程度想定しておいた方が良いでしょう。
ただし、それらは需要の拡大に伴い徐々に整っていく期待も持てるため、安全性がより高いものになり、本格的に一般層が参入する前段階である今の時点で資産形成をスタートした方が、希少性の高いアイテムを入手するチャンスは多くなっています。
したがって、現在NFTを検討している方は本記事を参考に、日本のマーケット動向をこまかくキャッチしつつ、適切なリスク管理も意識しながらチャレンジしてみて下さい。