暗号資産の中で、為替相場取引でいうスワップポイントを得られるサービスがあるのをご存じでしょうか?ただポジションを保有しているだけでも、自然と報酬を得られるチャンスがあるのが魅力的です。
報酬は、一般的にステーキングと呼ばれていますが、特にテゾスのステーキングに人気が集まっています。では、テゾスのステーキングにはどのような魅力があるのでしょうか?
この記事では、テゾスのステーキングを利用することによるメリットやデメリットなどについて、詳しく解説します。
テゾスのステーキングとは?
まずはじめに、ステーキングについて簡単に説明すると、マイニングの代替え手段として取り入れられている仕組みです。ステーキング対象の暗号資産を使用しないでウォレットに入れて、ブロックチェーンに参加するだけで報酬を得ることが可能です。
海外では、大手の暗号資産取引所が次々とステーキングを導入し始めており、トレンドになりつつあります。テゾスにおいても、ステーキングを導入していますが、その概要は以下の通りです。
通貨を保有するだけで利益が得られる
コインを保有しているだけで利益を獲得できるステーキングは、ブロックの承認作業を定義しているコンセンサスアルゴリズムが密接に関連します。テゾスでは、リキッド・プルーフ・オブ・ステーク(LPoS)を採用しています。
これは、特殊なハードウェアや大量の電力消費が必要となるPoWとは違い、PoSではトークンの所有量を基準として、ブロックを生成する権利が付与されるのです。テゾスでは、ブロック生成を行うことをベーキング、ブロック生成者のことをベイカーと呼んでいます。ベイカーになるためには、8,000XTZを保有する必要があります。
年率は3〜6%程度
実際に、テゾスのステーキングでどの程度の報酬を得られるかが気になりますよね。テゾスのベーキングでは、運用するタイミングなどによって異なりますが、概ね保有しているだけで年率換算で3~6%の報酬を得ることができるのです。
なお、ステーキングによる収益の所得税は雑収入扱いとなります。レンディングサービスとは違い、全ての暗号資産がステーキングを利用できるわけではありません。その意味でも、テゾスではPoSを導入しているからこそステーキングで何もせず報酬を得ることができるのです。
ステーキングと貸暗号資産の違いとは?
ステーキングと似ている暗号資産の運用方法として、貸暗号資産があります。貸暗号資産は、レンディングとも呼ばれており、保有している暗号資産を貸し出すことにより、貸し出した暗号資産の数量に応じた貸借料を得られるサービスです。
どちらも、保有してる暗号資産を活用して、何もせず報酬を得られる点は同じですが、細かな考え方の違いがあります。ここでは、ステーキングと貸暗号資産の違いについて解説します。
対象となる仮想通貨の範囲
ステーキングと貸暗号資産の違いとして、対象となる仮想通貨の範囲があります。ステーキングは、先に紹介した通りPoSを導入している場合にのみ導入できる仕組みとなっています。
よって、すべての暗号資産が対象というわけではなく、対象となる暗号資産は決して多くありません。一方で、貸暗号資産は比較的幅広い暗号資産で利用可能です。代表的な暗号資産としては、以下があります。
- ネム
- ベーシックアテンショントークン
- オーエムジー
- クアンタム
- エンジンコイン
- ポルカドット
大手だけでなく、比較的マイナーな暗号資産にも対応しているのが特徴的です。
期間の縛りがない
貸暗号資産は、一定期間暗号資産の使用をロックする必要があります。貸暗号資産は銀行の仕組みにとてもよく似ており、暗号資産を預かった暗号資産取引所は、それを第三者に貸し出すことで利益を得て、貸し出した側に還元しているのです。
また、イメージとしては定期預金のような形で、貸出期間が決まっておりその期間に応じて年利が決定します。一方で、ステーキングの場合は参加するのも離脱するのも、自分が決めたタイミングで行えます。自由度が高い一方で、管理工数がかかったり運用次第では思うように利益が得られないというケースもあるのです。
報酬が確実に得られるわけではない
貸暗号資産の場合、先に紹介した通り貸し出す期間とその間の年利が決まっており、確実な資金運用が可能です。例えば、日本の大手暗号資産取引所であるGMOコインでは、以下の条件で暗号資産の貸し出しを行えます。
- 年率 3%コース(3ヶ月)
- 年率 1%コース(1ヶ月)
短い運用機関ですが、それでも最大3%もの報酬を得られるのは魅力的ですね。一方で、ステーキングの場合は仮想通貨自体に価格変動リスクがあることにより、確実に報酬を得られるわけではない点に注意が必要です。
もしステーキングで暗号資産の量が増えたとしても、暗号資産の価値が下がることで実質的な利益が亡くなる可能性があります。
ステーキングのメリット
ステーキングが注目されているのには、魅力的なメリットがあるという点が挙げられます。主なステーキングのメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 保有数量の上限がない
- いつでも仮想通貨を売却・送金できる
- 短いスパンで報酬を得られる
それぞれのメリットについて、より詳しく解説していきます。
保有数量の上限がない
例えば、貸暗号資産の場合は保有数量に上限が設定されていることがあります。当然、保有数量の上限の範囲内で運用することになり、より多くの暗号資産を保有していても運用に回すことができません。
一方で、ステーキングの場合は保有数量に上限がありません。マイニングに近いものとなっているため、参加者が増えれば増えるほど恩恵を受けるチャンスがあるのです。
先に紹介した通り、暗号資産自体の価値が下がることでステーキングしても利益を上げることができないなどのリスクがありますが、より多くの暗号資産を保有していて、運用に回したい場合はステーキングは最適な方法と言えます。また、貸暗号資産のように貸し出しのニーズがなくて貸し出すことができないことがない点も魅力的です。
いつでも仮想通貨を売却・送金できる
貸暗号資産の場合は、先に紹介した通りに一定期間は預ける形となるので、その間は売却したり送金したりできません。利用するプランによりますが、少なくとも数カ月間は取引できないために、その間にどうしても取引が必要になった場合に困ることが多いです。
その点で、ステーキングの場合はいつでも売却・送金できる点が魅力的です。また、ステーキングの吐合は決められた期間が存在しません。極端に言えば、ステーキングというサービスが継続する限り、永遠に運用することもできます。
短いスパンで報酬を得られる
貸暗号資産の場合、貸し出している期間は取引できないと同時に、期間を満了しなければ指定の報酬を得ることができません。基本的に、貸し出す期間が長ければ長いほど、報酬額がアップする仕組みとなっているのです。
一方で、ステーキングの場合は毎週報酬が支払われることもあり、より短いスパンで報酬を得ることが可能です。よって、短期間で報酬を得たいという方にとってはステーキングは最適な方法と言えます。また、運用期間中に暗号資産の価格変動があったとしても、短いスパンであれば臨機応変に対応しやすいというメリットがあります。
ステーキングのデメリット
暗号資産を保有するだけで報酬を得られるステーキングですが、デメリットも少ながらず存在します。主なデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。
- 対象銘柄が限られている
- 一度に得られる利益が少額
- 一定量の仮想通貨を保有している必要がある
デメリットを正しく理解して、確実な運用を行うことが重要となります。ここでは、デメリットの詳細について詳しく解説します。
対象銘柄が限られている
ここまで解説してきた通り、ステーキングを行える暗号資産は、PoSに対応している場合のみです。すべての暗号資産がPoSに対応しているわけではなく、テゾス以外では以下の暗号資産でステーキングが可能です。
自分が主に取引している暗号資産があったとしても、対象銘柄が限られていることでステーキングできないことがあるので注意しましょう
一度に得られる利益が少額
ステーキングで得られる報酬は、年利換算で3~6%程度となります。通常の定期預金などと比較すると、とても高いと感じますが暗号資産の取引のようにハイリスクであるものの大きなリターンを得られることを考えれば少し低い印象があるのは事実です。
また、コインチェックでリスクを運用する場合、ステーキングに利用する対象となるLSKの量が少ない場合、報酬を受け取れる上位101位までに入らないと報酬対象外となります。以上のように、取引対象となる取引所と暗号資産の銘柄によっては、利益が少額になる、もしくは対象外となるので注意してください。
一定量の仮想通貨を保有している必要がある
ステーキングでは、保有している暗号資産をすべて運用に回すことができると解説しました。上限は確かに存在しませんが、実は裁定取引数量が設定されているのです。
例えば、コインチェックの場合は1日あたり平均10LSK以上保有していること、または「貸仮想通貨アカウント」にて貸出中でないLSKを1日あたり平均10LSK以上保有している必要があります。また、テゾスの運用が可能なGMOコインでは、最小保有数量が1 XTZ/日に設定されています。
最小保有数量とは、判定期間における平均保有数量を元に判定し、各営業日において対象銘柄の口座残高を営業日で合計、口座残高の合計を判定期間の日数で割った数値です。以上のように、少額からスタートできるわけではなく、ある程度まとまった暗号資産が必要になる点には留意が必要です。
ステーキングを行う際の注意点
先に紹介したデメリットと同時に、ステーキングする際には注意すべきポイントがあります。ここでは、主な注意点について解説していきます。
通貨価値の下落リスク
暗号資産の場合、価格の乱高下がとても大きく、為替相場の比ではありません。順調に値上がりをしても、少しのきっかけで価値が数割レベルで低下することも多々あります。
ステーキングでコツコツと利益を重ねていっても、暗号資産の価値が暴落して利益ではなく負債を抱える可能性もあるのです。よって、基本的には価格が安定している仮想通貨をターゲットとして運用することをおすすめします。
信頼性の低い取引所の利用
ステーキングは、基本的に個人だけでなく取引所で提供されているサービスを利用して運用します。ただ、取引している取引所によっては保証が不十分で、資産の一部を失う可能性があるのです。
例えば、日本では銀行が倒産したとしても、預金保険制度があり元本1,000万円までとその利息分が保護されます。定期預金や利息の付く普通預金でも、預金者1人当たり1金融機関ごとに合算されますが、元本1,000万円と破綻日までの利息等が保護されるのです。
ただ、仮想通貨の取引所では預金保険制度は適用されません。もし取引所が破産しても、元本が保証されずに資産を失うことになるので、信頼性の高い取引所で運用しましょう。
ステーキングサービスを提供している他の通貨
ステーキングは、テゾス以外でも数こそ多くありませんが提供している暗号資産が存在します。ここでは、代表的な暗号資産であるリスクとカルダノ・エイダコインについて解説します。
リスク(LISK)
リスクは、2016年に登場した暗号資産で、2021年に入ってからも価格が上昇を続け、2021年5月には初めて10ドルを突破しています。リスクのステーキングでは、コンセンサスアルゴリズムとしてDPoSが採用されており、保有者に対して保有量ごとに投票権を付与し、投票によってブロック生成の権利を決定する仕組みを取り入れているのが特徴です。
リスクは非中央集権型を採用しているために、メジャーな暗号資産であるイーサリアムとの競合となる可能性があります。また、2021年内にSDKツールが配布される計画があるために、注目の存在です。
カルダノ・エイダコイン(ADA)
カルダノ・エイダコインは、Cardanoブロックチェーンで利用するために作られた暗号資産として知られています。イーサリアムとは違うスマートコントラクトを実装しており、またウロボロス計画によってマイニングに公平性を保っています。
日本でも人気が高く、また2021年9月13日には大型アップグレードであるアロンゾが実装されて、話題を呼びました。カルダノ・エイダコインでは、カルダノステーキングと呼ばれるステーキングを行うことができます。
まとめ
ステーキングは、FXにおけるスワッピングポイントのようなイメージで、保有しているだけでも報酬が得られる魅力的な仕組みです。また、銀行における定期預金などと比較しても、高い年利で運用できるのである程度の報酬額を見込めます。
暗号資産の価値が暴落することにより、ステーキングで得られた利益が失われるなどのリスクがありますが、うまく運用すればメリットが大きな仕組みであると言えます。